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最後は仕事編!
好きなことを仕事にするため、私たちは学生時代をどう過ごすべきか考える。
しかし学生時代から、既に好きなことを仕事にしている人がいる。
「学生だから」なんて甘えが通用しない場所で、真剣勝負をしている人がいる。
大学の中では決して手に入れられないものが、そこにある。

―具体的に放送作家の仕事がどういうものか教えていただけますか?

松本「テレビやラジオでこんな番組やりたいなとかこんなコーナーやろうとかいった企画を考えたり、番組の台本やナレーションを書いたりする仕事です」

―なぜ放送作家になろうと思われたのですか。

松本「昔からテレビ業界には漠然とした興味を持っていたんですよ。具体的には高校1年の夏にやっていた27時間テレビを観たのがきっかけです。それの深夜にやっていたお笑いのコーナーがとても面白くて、いつかこの番組に携わりたい、この番組を作ってみたいと考えるようになりました。でも当時は放送作家という職業を知らなかったので、27時間テレビを放送しているフジテレビの社員になりたいと思っていました」

―早稲田にはどういう理由で来られたんですか。

松本「フジテレビの社員さんって早慶の人ばっかりっていう話を聞いて、だったら早稲田に行こう、と。フジテレビ自体も東京にありますし。ただそれだけですね」

―具体的に放送作家のお仕事を始められたのはいつごろからですか?

松本「大学1年の2月ごろです。だからまだ1年ぐらいしかやっていないんですよ」

―それまではどのような大学生活を送られていたんですか?

松本「東京に病んでいましたね(笑)。全然楽しくなかったです。最初に入ったサークルは夏休みごろから行かなくなって、その後も2〜3個いろんなサークルを回ったんですけど、どれも自分には合わないなぁ、違うなぁと思って行かなくなってしまいました。アルバイトも2〜3個転々としたんですけど、同様の理由で全部ブッチして辞めました(笑)。とりあえず大学生活を面白くしようともがいてはいたんですけど、残念ながら腐った大学生活を送っていましたね」
松本建一
―そのような生活から放送作家になろうと思ったきっかけは何だったんですか?

松本「ちょうどその頃にテレビで放送作家の方を取り上げている番組があったんですよ。それでその方は大学生の頃から放送作家の仕事をしているとその番組で言っていて、それなら今の自分でも出来るのではないかと思って。その頃は冬休みだったので大学に行くという唯一の用事も奪われ、サークルにはもう顔を出さなくなっていたし、バイトも面白くないし、インターネットの動画サイトで『モヤモヤさまぁ〜ず』という番組を朝から晩までひたすら見続けていて」

―それはモヤモヤしてますね(笑)。

松本「モヤモヤしてましたねぇ(笑)。だからそんなくすぶった生活から抜け出したいという思いもありました。もともと早稲田に来たのはフジテレビの社員になりたかったからなんですけど、とにかくテレビに携わりたいという思いが強くて、そこに関われるならどのような形でも良いという気持ちにもなっていました。それで具体的に放送作家の仕事や、自分の好きな番組はどういう方が放送作家を務めているのかといったことを調べ始めました」

―そのように将来やりたいことをみつける学生は多くいると思います。ただそこからの一歩を踏み出すのってとても難しいですよね。松本さんはそこからどうやって一歩を踏み出したんですか?

松本「僕の場合は少し特殊なんですけど、そうやって放送作家について調べているときに、今の僕の師匠である放送作家さんに興味を持ったんですね。その方は僕の大好きなくりぃむしちゅーさんやさまぁ〜ずさんなど有名なお笑い芸人さんが出演している番組を多く手掛けていて、さらに僕が大好きで当時の心の支えだった「モヤモヤさまぁ〜ず」の放送作家も務めていて、単純にすごいなと憧れの気持ちを抱きました。それで興味を持ってさらに調べていくとその方のホームページを見つけたんです。そしてそこに『このホームページへの感想・ご意見はこちら』とメールアドレスがのっていて、確か『放送作家になりたいです』みたいな内容のメールを送りました」

―すごい行動力ですね。不安など無かったんですか?

松本「絶対無視されると思いましたけど、何もやらないでこのままの生活を続けるよりはマシかなと思い、だめもとでメールを送りました。だから返信が来るわけないと思って、メールを送った後しばらく外出してたんですよ。そして家に帰ってきてパソコンを起動させたらなんと返信が来ていて、しかも僕が送った1時間後ぐらいに返ってきていてびっくりしました」

―そこからどうやって放送作家になられたんですか?

松本「その返信メールと一緒に課題みたいなものも送られてきて、今思えば入学試験みたいなものだったんでしょうけど、その課題をこなして送るとまた新たな課題が送られてきて……といったやりとりを1カ月ぐらい続けた後、その放送作家さんに初めてお会いすることができました。そこで放送作家についての説明を受けたり、本当にやれるのかと意志の確認をされたりした後、無事その方の弟子として放送作家の世界に入ることができました」
松本建一
―なるほど、すんなり放送作家になられたわけではないんですね。
そしてそのような経緯を経て放送作家になられて約1年が過ぎたわけですが、放送作家をやってて良かったと思えるのはどんなときですか?

松本「僕なんてまだ全然ペーペーなんで、本当の放送作家の楽しいところなんて理解しているかわからないですけど、やっぱり憧れのテレビの世界にいれるっていうそれだけで最高に幸せですね。あと、自分が考えたことがテレビに流れる、まぁ僕が考えたことなんてまだまだ番組に反映されないんですけど、それでもちょっとだけ反映されることがあって、そのときはめちゃくちゃ嬉しいです」

―逆に辛いことっていうのは?

松本「なかなか睡眠時間がとれないことですかね。深夜ラジオの仕事も多いので、終電に間に合わないことが多いんですよ。でもまぁそんなことはどうにでもなることですし、そんなに辛いってわけでもないですね。むしろ放送作家をやる前はこんなにいらないっていうぐらいヒマな時間があって、たっぷり睡眠をとっていたんですけど、そっちのほうが辛かったです(笑)」

―確かにヒマすぎるほうが辛いですよね。睡眠時間もしっかり取れないぐらいお忙しいようですが、普段の大学生活はどんな感じなんですか?

松本「サークルは放送作家をやる前から行ってなかったですし、バイトも放送作家を始めてしばらくしてから辞めました。だから大学生らしいことっていうと授業に出席するぐらいですね」

―授業にはきちんと出ているんですか?

松本「さすがに全出席というわけにはいきませんけどね。番組の企画会議が突然入ったりもするので。でも出席できる範囲で頑張っています。」

―すごいですね! 私なんて時間があるにも関わらず授業に出ないときもあるのに(笑)。
大学を卒業した後はどうされるおつもりなんですか?

松本「とりあえず就職活動をするつもりはありませんね。大学を卒業してもこのまま放送作家の仕事を続けていくつもりです」

―では放送作家としての目標は?

松本「やっぱり師匠のようなすごい放送作家になることですね。そのためにも今できることを一生懸命やっていこうと思っています。そうすればいろいろなことが経験できると思うし、そうやっていくことによって少しでも師匠にも近づけるのではないかなと考えています」
松本建一
―最後に去年の松本さんのように、何をすればいいかわからなくて悩んでいる大学生にメッセージをお願いします。

松本「僕なんかがこんなことを言うのもおこがましいですけどね。でも僕が言えることは、大学生になったらみんな漠然としてるにせよ、何かしらやりたいこととかあると思うんですよ。そういう漠然とした想いを具体的な行動に移してみることが大事だと思います。僕の場合だとメールを送るというちょっとした行動が、想像もできないような未来につながったので。山の頂上を目指すときに、一気に登ろうと考えると無理に思えちゃいますけど、まず一歩目をどのように踏み出すかを考えれば案外道は開けてくると思います」


松本さんも悩んだ。望んだ大学生活とはかけ離れた、くすぶった大学生活。しかし自分の夢へと具体的に行動を移すことによって、夢に向かって走り続けている今の日々を手に入れた。
それは彼がもともと持っていた大学生活のイメージとは違っているかもしれない。しかし彼の顔は今、充実感に満ち溢れている。

あなたは、どうする?
松本建一
松本建一
1989年生まれ。京都府出身。早稲田大学法学部在学。
担当番組
ラジオ――レコメン、いそラジ(文化放送)、4Rooms(TOKYO FM)
テレビ――爆さま(TBS)
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