フォントを作った大学生が居るってふぉんと?
-美大生のふぉんと作りに迫る-

文章の印象を決めるフォント。一体、誰が作っているんだろう。「私たちと同じ大学生も作っている」と言ったら、驚きませんか?

今回はタイポグラフィやフォント作りをしている美大生の鵜飼まなみさんにお話を伺いました!

 

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↑鵜飼まなみさん
多摩美術大学グラフィックデザイン科1年。
浪人生の時、自らの作品を集めたファイルを作成し、そのファイルに合うフォントを自作した。また、タイポグラフィ制作も行っている。

 

————フォントを作ったきっかけを教えてください。

自分の作品を集めたファイルを作ろうとした時に、そのファイルに合うフォントがないなって思ったんです。なので、自分で作っちゃいました。
手塚治虫さんの漫画が好きなんですけど、その漫画に出てくる効果音や題名の文字が可愛くてそれを参考にして作りました。
私は見出し用にフォントを作っていたので、読ませるためのものではないんです。魅せるフォントなんです。ですから、見出し以外の文章は既存のフォントを使わせてもらいました。

 

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————フォントはどうやって選んだんですか。

フォントを既存の中から選ぶ時には作品との兼ね合いをとても重視しています。フォントもグラフィックの一部だと感じているからです。
フォントによって印象が全然違うじゃないですか。隅々まで隙がない作品を作りたい。自分のグラフィック全てにこだわりたいんです。グラフィックとの兼ね合いで、なるべく自分の理想に近いものを選んでいます。

 

————1文字どのくらいで作られたんですか?

10分、15分くらいかな。即興で作ったんです。
全てすぐに作れたというわけではなくて、文字によって難しさが変わるので大変なものもありました。例えば、「め」とか。字によって完成度が違うのでちゃんと作り直したいです。

 

————これからまた違うフォントを作ろうと思いますか?

そうですね、いつかは作ると思います。
今はこのフォントでいいと思っているんですけど、また作品が増えたら新しいフォントを作りたくなっちゃうんだろうな。作品のすべてにこだわりたいと思っています。

 

————好きなフォントはなんですか?

お金ないのでフリーフォントでいうと好きで一番使ってるのはコーポレートロゴです。
いつか買いたいのは筑紫ゴシックです。すごいきれいですよね。浪人していた時に友達に紹介してもらって、いつか手に入れたいと思っています。

 

————フォント作り以外にタイポグラフィもされていたんですよね。タイポグラフィとフォントではどう違うと考えていますか。

私が思うすごく勝手な主観なんですが、フォントは1字1字マスとか規定が決まっていて厳しい中で作っていきますよね。一方でタイポグラフィはその規定を崩して自分なりの性格とか感情を文字に入れてあげられると思います。
私はタイポグラフィは人に伝える事にすぐれているものだと思ってます。フォントはあくまでも文章を書くためのもので、タイポグラフィ一目で人に伝えるものだと思っています。

 

————鵜飼さんの代表作となるのはこのお笑い芸人さんたちのタイポグラフィですね。これはどういったコンセプトで作られたんですか。

私は2浪していたんですけれど、落ちた時にすごく落ち込んでしまったんです。何もできない状態になった時に元気を出そうと思ってレンタルDVD店に行きました。そこでM-1グランプリを過去10年分全部借りて一気に全部見たんです。そうしたらすごく元気になったんです。
芸人さんって最終的な目標を「人を笑わせること」にしてるじゃないですか。それって他の仕事にも共通すると思うんです。自分の言葉と体で笑わせられるってかっこいいと思ったんです。芸人さんはくだらないとか馬鹿げているとかのイメージの方が大きいと思うんですけど、「そうじゃないよ、こんなにかっこいいんだ」って私が彼らのかっこよさを伝えてあげれたらいいなという思いで作りました。

 

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↑浪人時代に通っていた予備校主催の展示会で、一人一枚に限り無料配布をした

 

————タイポグラフィで自分を表現したい?それとも誰かを?

自分というよりは誰かを。
私のファイルは自分の好きなものがテーマでしたが、そこに、自分のスパイスを少し加えているんです。
私の作品の題材は高尚とかかっこいいとか言われるものではないんです。それらをいかに魅せることができるかをもっとも重視しています。

 

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————これからもフォントやタイポグラフィを作っていきますか?

はい。作品のすべてにこだわりたいと思っているので、自分の作品に合うフォントがなければまた作ると思います。タイポグラフィも続けていこうかなと考えています。
3年で専攻を決めるので、あと1年タイポグラフィを続けて「何か違うことをしたいな」ともし思ったら違うことをすると思うんですが、「このまま行こう」と思ったら3年生でタイポグラフィを専攻したいです。
作っていて1番楽しいのはタイポグラフィだし、見るのも1番好きなので。続けていけたらいいなと思っています。

 

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