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戸部亮介さん
早稲田大学政治経済学部。南仏の町・オブナの私立中学校にてフランス人に日本語を教える。期間は2003年9月から2004年6月まで。
「トトロ」と「座頭市」
今日、授業で生徒達に「隣のトトロ」を見せた。驚いたことに、私がビデオを再生し始めると、十代前半の彼らは自ら電気を消し、窓のカーテンを閉めた。つまりは、それだけ、映画をその場での最もよい環境で見ようという意思が彼らに働いていたのだ。多分、それは親の影響などが大きいとは思うのだろう。そうして、文化に対して子供のうちから、大いにこだわりをもって臨む態度には、彼らに敬意を表したい気分になった。「隣のトトロ」、子供達は気に入っていたようだった。
ちょうど、今日はフランス全土で「座頭市」の上映されはじめる日で、ここオブナでも封が切られた。日本人は私の働いている中学校以外には住んでいなくて、本屋には日本の本も置いていないし、銀行では原則として円の両替もできないようなフランスの村にも、日本の映画はこうして上映される。それは本当に凄いことだと感じた。フランス人も大いに笑い、大いに楽しんでいる様子がみてとれた。笑いのポイントも少し、日本人の私と、フランス人ではずれていて、例えば、刀で人を斬るシーンの度にフランス人は笑っていた。おそらく、そこに、フランスではありえないものを感じていたからなのだろう。私は、刀に斬られて血を噴き出しながら人が死ぬ度に、フランス人から笑いが起きてしまうことに、無知の生じさせる「残酷さ」を感じた。中国では刀は未だに悪い印象があるだろうに、国によって与える印象が全く違うものだ。
子供もかわいいさとともに、残酷さをもちあわせている。それは人生経験が少なく、無知の領域がとても大きいことが影響していることなのだろう。であるからこそ、子供時代の経験というのは非常に人格形成に対して大事で、教育においては生徒にどのような経験を提供していくかという点が、教育者にとって最も大事なのではないかと帰り道に改めて感じた。