――左京さんはそういったことを考えるために1年間、卒業を延ばされたというこ となんですが、その1年間はどのように考えて過ごされたんでしょうか?
飲食に当時興味があったので、スターバックスでアルバイトをして、なんとなく
働くっていうことに自分をさらしたり、自分の思っていることを書いてみたり、
人に話したり。
あとはインターネットや本の情報を吸収するような作業もしたし、つながりのあ
る人や先輩でいろんな業種の方にお会いしてお話を聞いたりというように、いろ
んな方法で考えましたね。
自分がどういう仕事、どんな働き方がしたいかなぁと思ったときに、お金はいく
らくらいほしいとか、どこに住みたいとかいろんな要素が出てくると思うんです
けど、そのなかで網の目をブルブルふるっていくみたいに、あえて一個だけ残せ
といわれたらどれが譲れないんだろうというふうに考えていったんです。
そうすると「なんか人のためになる仕事ができればいいんじゃないかなぁ」と思
ったんですよ。
まぁ人のためになにかやるといっても、偉そうに世界をどうこうするとかそうい
うことではなくて、例えばスターバックスで働いている中で、いい対応ができた
りして、お客さんの顔が明るくなったりとか、気分が良くなってもらったりする
じゃないですか。なんかそれぐらいなんです。
素朴に人が喜んでる顔っていうのがすごく好きだったし、そういう場を作るって
いうのが自分は向いている気がしていましたね。
人のためになるって言っても、ほとんどの仕事が人のためになるわけですし。
だからそれだけを心にとどめておいて、あとは実際にやってみないとわからない
なぁと思って、とりあえず就職してみようと思ったんです。
それで、就職先を考えてみた際に、具体的な業種としてはなかなか想像がつかな
かったんですけれども、海外で働いてみたいということを思ったんですよね。
じゃあどこで働いたらいいんだろうって考えていたときに、一番早く海外に行け
るのが商社だと先輩に教えられて、いろいろ考えた結果、応募したのは住友商事1
社だけということになりました。
そうして商社に入って、まずは仕事そのものとか会社の仕組みとかそういったこ とを勉強をしてみようと、経理部っていう会計とか税務をやっているところに入 って、働き始めるわけです。
――なるほど。ではそれからどういった経緯で現在のシブヤ大学でのお仕事をさ れるようになったのですか?
そうですね、住友商事で3年くらい働きながらも、自分はどういうことをしたい
かなぁということは引き続きずっと考えていたんです。
もちろん仕事は自分なりに一生懸命やっていて、充実感もあったし、会社に何か
大きな不満があったりしたわけではなかったんですよ。
ただひとつきっかけになったことがあって、ワンガリ・マータイさんという人が ノーベル平和賞をグリーンベルト・ムーブメントという活動で獲られたんです。 それはいわゆる社会貢献活動としての環境への取り組みと同時に、うまくビジネ スとドッキングしていて、それで世の中にとって良いといわれる活動と、経済活 動は両立するんだなぁということを思ったんです。
そこではじめて自分がやりたい仕事ってこういうことなのかな、自分もこういう
ことができたらいいなぁとぼんやり思ったんですよね。
それなら、やってみなかったことをあとで後悔するのも嫌だから、いっちょチャ
レンジしてみようかと(笑)、そう思って会社を辞めて、辞めた後にシブヤ大学
のプロジェクトに出会うんですね。
なので、やりたい仕事に出会ったというか、そっちに歩いていきたいなというの
がぼんやり見えてきたというぐらいなんです。
自分の個人の思いとしては、どんな会社でというこだわりは特にないんですよ。
もしかしたらもっと自分の思いに即した会社があるかもしれないと思うんだけど
も、具体的な何かというより、こうやって仕事をやっていけたらいいんだという
ことが見つかったほうが大事だったんですね。