天龍村アートプロジェクト、通称T.A.P。長野県一過疎化が進み、高齢者人口が全体の約50パーセントという、深刻な問題を抱えている天龍村。そんな天龍村をどうにかしたいという、熱い想いをもった学生たちがいる。天龍村アートプロジェクト、通称T.A.P。アートを通じた村おこし、という新しい試みだ。
村側の反応はどうなのだろうか?
村長にお話を伺った。
あなたには、"親戚"と呼べる人たちが何人いるだろうか?
5人? 6人? それとも10人?
「2000人。もっと多いかな? どんどん増えていくんだよ」
柔らかな笑顔でそう答える人がいる。長野県天龍村村長、大平巌さん。
村長として何とかこの村の状況を改善しようと、観光面からのアプローチを進めようとしている。しかし、天龍村にはこれといった名所もなければ名物もない。それにも関わらず、村長は前向きだ。
「人との付き合いがある。これだけで十分」
人口が少ないこの村は、村民同士の関わり合いがとても深い。"人付き合い"を、この村では"親戚付き合い"と言っているほどだ。つまり、村民全員が親戚のようなもの。そして、村の訪問客も一度親しくなれば、もう天龍村の親戚なのだ。特筆すべき名所もないこの村に二度三度とやってくる人は、何を見に来るでも買いに来るでもない。他でもなく、"人との交流"を求めてやってくる。
また、心と心の付き合い。それを求めて、自然と天龍村に足を運んでしまう人も多いという。
「帰りたい家がある。会いたい人がいる。そんな思いが集まるような地域にしたい」
多くの人々にとって天龍村が、まさに"第二の故郷"となることを目指しているのである。
そんな村長の思いと繋がるTAPの活動を、どうとらえているか尋ねると、
「大いに期待しとるよ」
そう笑顔でうなずいた。人との付き合いを大切にする村だからこそ、村長は学生たちに交流の大切さを伝えた。
「30件挨拶に回るなら、30件親戚をつくってこい。こう言ったんだよ」
彼らは去年1年で、見事に天龍村に親戚を増やしていった。
始めは、突然東京から来て「天龍村を助けたい!」と盛んに主張する彼らのことを、少しばかり奇怪に思っていた村長も、そして村民も、真摯にがんばっている学生たちの姿を見て次第に心を開き、期待を抱くようになったのだ。
「村の将来を考えて、せめて種だけはまいておこう」
現在、村長として、10年後のために何をすればいいかを考えているという大平さん。今すぐに成果をあげるのではない。今やっていることが種となって、後に結果として現れてくれればいい。
その種にこめられた、村長のゆずれない思い。
「おいしいものなんてなくてもいいんだ。見るものがなくてもいいんだ。だってこの村にはあったかい人たちがいるから。心安らぐから。それしか売り物はない。でも、それが一番大切」
そんな思いのつまった種を、大平さんは学生と共にまいている最中だ。
果たして10年後には、どんな花が咲くのだろうか。 |