2006/09/02
自称グルメの一般学生。推理小説が好きで、探偵に憧れている。丁寧な言葉の裏に、影が見えたり見えなかったり。実は腹黒なのか?
所長の部下の1人。……のはずだがついに1人歩きをし始めた。ガリガリ君を大量に消化した強靭な胃を持つが、果たしてわせ弁には通用するのだろうか。
【第3話】
《前編のあらすじ》
1週間でわせ弁メニュー全制覇……。
ありとあらゆる手を尽くすも、その挑戦はあまりに無謀なものだった!
疲れ果てた男たちはそれでも弁当を食べ続け、そしていよいよ、最後の日が訪れる!
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7日目。いよいよわせ弁ファイナル!
今日は、少し皆さんを楽にしたいと思ってちょっとした計画をたてているの。
いくら鈍感な私でも、毎日皆さんの様子を見るうちにようやく1週間同じものを食べ続けることがいかにキツいかを知ったから……少し、味を変えて差し上げるつもりなのよ。
そう、わせ弁をアレンジして食べやすくしてあげよう! ってワケ☆
そうと決まったら買出し、買出し!
私「卵に、牛乳に……。あ、シュークリームが安いわ! あんこも安いわねぇ。ホットケーキミックスもなんてお買い得なの!」
セール品ばかり買ってたら甘いものだらけになってしまったわ。でもきっと大丈夫よね。佐藤さん甘党だそうだし、きっとそろそろ甘いもの食べたいとか言い出すに違いないわ。
18:00、わせ弁前で皆様をお出迎え。とりあえず弁当を注文していただきます。
私「もう7日目……皆さんもういい加減、何か違う味が恋しいんじゃないですか?」
佐藤「マジ恋しいですよ。甘いもの食べたいですもん」
まぁ! なんて思った通りの反応をしてくれるのかしら!
私「本当ですか?」
佐藤「(……やばい! この声、やばいニオイがする……!!)」
私「そう思って、準備しておいたんですよ! じゃあ今から私の家に行きましょう!」
全員「(うわぁぁぁ……行きたくねぇぇ……)」
東城「(佐藤、お前余計なことを!)」
佐藤「(すみません! ついうっかり……)」
なぜか皆さん固まっているのが気になるけど、きっとうまく喜びを表現できないのね。家まではここから20分程度。胃が重いせいか皆足取りが恐ろしく重いわ。
18:34、家へ到着。
私「皆さんくつろいでてくださいね。私が大変身したわせ弁を作って差し上げるわ!」
全員「……え!? 大変身したわせ弁……!?」
18:36、全員待機。
王子「……春子さん一体何を食べさせようと言うんでしょうね……」
渡会「甘いものとわせ弁がどうしても結びつかない……」
18:45、春子特製メニュー第1弾完成。
私「わせシューです☆」

わせ弁の具をクリームとシュー生地が優しく包みます。
全員「えぇぇぇぇ……」
私「どーぞ遠慮せず召し上がってくださいね。まだいっぱいありますから」
全員「……」
私「じゃあ私は次のメニューに移るので、皆さんゆっくり食べててくださいね」
18:48、目と目で繰り広げられる「お前いけよ」「いや無理」の会話。その結果、渡会さんが空気に負ける。
渡会「……わかったよ、じゃあオレ食うよ」
わせシューと向き合い、思わず深呼吸。大口開けて一気に食べる!!
王子「うわぁぁぁぁ……」

果たしてそのお味は!?
東城「……どう?」
渡会「……ん? あれ、でもコレいける!! 味が完全に分離してんの。うまい!」
東城「え!? 嘘!?」
大丈夫と聞くや手をのばしだす皆さん。
東城「あ! コレうまい!! 甘いのが合うよ。うまい! 本当うまい!!」
哀愁「……ん!? これ普通にうまい! アリですねこれ」
佐藤「皆、目を覚ましてくださいよ! うまいわけないじゃないですか!!!」
東城「いや、コレうまいよ。若干もう1つ食いたいもんオレ」
渡会「結構アレンジ良いんじゃない!?」
19:02、春子特製メニュー第2弾完成!
私「お待たせしましたー。おはぎです」
王子「で、でかいっ」

わせ弁と「日本の心」おはぎの奇跡の融合。
全員「……」
19:05、再び目で会話。そして再び渡会さん空気に負ける。
渡会「いきゃいいんだろ、いきゃ」
ぱく。

……っ!!!!
無言で首を振る渡会さん。その様子を見て他の皆さんもぱくりと一口。
東城「……これは、これはないわ」
佐藤「だから目を覚ませって言ったじゃないですか」
哀愁「え? あんこの味しかしない。いけますよ」
運スタ陣「えぇぇぇぇぇぇ……」
19:08、春子特製メニュー第3弾。
私「皆さーん、食べてますかぁ? 今度はホットケーキですよ!」

わせ弁の具がすべてこの中に! シロップをつけてどうぞ。
全員「(こ……これ色おかしいって!!!)」
19:12、またしても目と目で会議開催。敗者、東城さん。
東城「……」
意を決して……! ぱく。
……!!

むぅぅうううううう!!!!!!!!
東城「あぁ……おぉぉぉ……うわ、うわっ」
佐藤「え! そんなにですか!?」
怖いもの見たさで全員ぱくりと一口。
佐藤「う……っ」
渡会「……うわっなんだこれ。どうやったらこんな事態が起こりうるんだ」
哀愁「え? いや、お好み焼きっぽくないですか? 大丈夫っすよ」
渡会「……悪いけどこれだけは同意できんわ」
王子「ひ、ひどいですねコレは……ちょ、ちょっと僕行ってきます! 春子さんにこのまま作らせてちゃいけない!!」
19:24、救世主、王子登場。
王子「どうぞ。わせ弁の具入りオムライスです」

これがわせ弁だと一体誰が想像できようか。
全員「すげぇー!! 普通にうまそう!!」
我先にとオムライスを口に運ぶ皆さん。
哀愁「うまい!」
東城「うまい!」
佐藤「うまい!」
渡会「すげぇ! わせ弁うまい!」
19:36、何かスクランブルエッグのような得体のしれない物体登場。
私「みーなさーん、これが最後です! なんかホットケーキミックス余っちゃったんで、適当に炒めてみましたー」
王子「つ、使い切らなくていいのに……!!」
19:42、一応食べてみることに。

渡会「(……どう?)」
東城「……」
佐藤「……」
哀愁「……」
渡会「すげぇ……。哀愁くんまで黙った……」

さまざまな要素が織り成す戦慄の不協和音に全員ノックアウト。
佐藤「でも、これで終わり……なんですよね……?」
渡会「そうでしょ、多分……。って、ん!?」
佐藤「どうしたんですか?」
渡会「……弁当、3つ残ってんだけど」
東城「……これオレらの昼の分じゃない? もしや」
運スタ陣「残ってたのか……」
19:50、調理終了! 皆さんのもとへ戻ってみると、びっくりするぐらいダークな雰囲気。
どうしたのかしら。……あっ!
私「そうか! そうですよね! なんで皆さんそんなに苦々しい顔してらっしゃるのかと思ってたんです。私ったら、今まで気づかないなんて! そうですよね、皆さん、まだ残ってるんですものね。裏メニューまで食べようとなさるなんてさすがだわ!」
全員「……は?」
私「またまた! そんなとぼけたフリして。だって確かまだ、私が初めて食べたわせ弁を見ていないもの。哀愁さんや東城さん、渡会さんと初めて会ったとき見たお弁当も……あれって裏メニューなんでしょう?」

『ナスカラー』『マツリー』
東城&渡会「……!!」
佐藤「いや! マジ無理っすよ!! 俺まだ1個残ってるんすよ! 無理っすよ!!」
哀愁「残ってはないけど……。このスクランブルエッグのような魔のメニューを片付けないといけないし無理だ」
東城「……」
あら、東城さん黙り込んじゃったわ。何か考えてる様子……。
東城「……いや、ここはいこうよ。最後だし。これいかないと絶対後悔する。だって制覇って言えないでしょ、これいかないと」
佐藤「……」
哀愁「……」
渡会「うん。ここは、いっとこう。もうこれで終わりなんだから!!」
哀愁「……はい。わかりました」
佐藤「……そうですね、これで終わりですもんね」
……あら? いつもと、雰囲気が……。
全員「行きましょう。これが最後のわせ弁です」
王子「……!!」
私「皆さん……」
必ず食べる、という決心をその目に確かに感じました。立ち上がり、私と王子さんを置いて歩いていく4人を、私たちは急いで追いかけたのです……。

この道を行けば、もう後戻りはできない……。
20:01、わせ弁、到着。
1人ずつ、しっかりとメニューを伝え最後の弁当を購入。
東城「ホイコーロー丼」
佐藤「ナスカラ」
哀愁「ベスカラ大盛りましまし」
渡会「マツリを」
弁当を手にし、4人はくるりとわせ弁へと体を向け、頭を下げる……。
全員「ありがとうございました!!」

ありがとう、ございました!
1週間、通い続けたわせ弁を後にし、向かう先は、いつかの夜、皆で食べた正門前……。
20:16、東城「やっぱり、わせ弁といえばここだなー」
東城さんが笑いながら階段に腰をおろし、ほかの3人がそれに続き、佐藤さんと東城さん、渡会さんは弁当を、哀愁さんは皆が残した魔のメニューを食べていきます。
哀愁さん……。自分の分じゃないのに……。
哀愁「……これほんとキツい。春子さんなんてものを作ってくれたんだ」
渡会「……ごめんねー、残して……」
20:43、黙々と食べます。

ここからは意地とプライドを賭けた己との戦い……。
20:54、そんな皆さんのもとに、通りすがりなのか、誰かから聞いたのか、運スタの方をはじめ、続々と応援の方が集まってきました。
応援の声に包まれながら、4人は弁当を食べ続けます……。
20:56、スクランブルエッグもどきの呪縛から逃れられない哀愁さん。
あまりに辛そうで、こんなものを作ってしまった自分に罪の意識が……。
私「もう、もういいですよ……。こんなの弁当じゃないですもの。もう、いいですよ……」
哀愁「いや、ここでこれを捨てて、制覇なんて言ったら今までの自分に嘘をつくことになる。だから、食べます」
哀愁さん……!! これが終わってもまだ弁当があるのに……!!
20:58、東城さん、佐藤さん、1食め完食! あと1つ! 残すは自ら食べることを選択したメニューのみ!
佐藤「あぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!! あと1つぅううう!!!」
21:04、しかし、ここまできて、弁当が、どうしても入らない……!!
東城「もうさ、入んないからさぁ……。入れようとしても入んないんだよ」
佐藤「あぁ、もう、ラストスパートみたいのが全然きかない……」
21:08、哀愁「お、終わった……」
やっとのことで魔のメニューの呪縛から解かれた哀愁さん! が、喜びも束の間。
最後の強敵、べスカラ大盛りましましが哀愁さんの前に立ちはだかる……。
渡会「ついにラスボスが……」
王子「哀愁さん、最後まで大盛りましましで通しましたからね……」
東城「こいつは、こいつは強いぞ……」

迫りくる強敵の恐怖。なんて圧迫感……。
21:13、男たちをあざわらうかのように雨が降ってきた……!
しかしそれでも、男たちは弁当を食べていく。すべては、己に負けないために!

雨も、もう彼らには関係ない……。
21:16、雨が強くなり、場所を移動。あまり雨があたらない木の陰へ。そしてそれぞれ、また弁当と向かい合う。
哀愁「背筋伸ばすとお腹が痛い……」
21:20、全員、弁当をお腹に入れすぎて膨れてしまっている。

まるで妊娠しているかのよう。
哀愁「やばいですねーお腹……」
渡会「いや、君も負けず劣らずやばいね」
東城「……佐藤は?」
全員「変化が見られない」
佐藤「うるさいですよ!」
21:23、1人1人に、限界を超えた限界が訪れようとしていた。
東城「動けない……」
哀愁「うぅ……」
21:29、佐藤さん、お茶を飲もうとしてこぼしてしまう。
東城「さ、佐藤!?」
佐藤「もう思うようにきかない……手、震えますよね?」
21:31、哀愁さん、腹痛で本当に起き上がることすらできない。

こんなになっても、まだ食べる意思は消えていない……。
哀愁「消化を待ちましょう。胃液を信じましょう……」
21:33、いつのまにか、雨はあがっていた……。だがついに、完全に全員の箸が止まる。
21:36、佐藤「運動……運動しよう」
佐藤さん、そう言い何を思ったか止まっている自転車をこぎ始める。

必死です。
21:39、哀愁「あぁぁぁぁぁぁ!!!!! キツい、苦しい……」
もういい、もういいですよ! 思わずそう言ってしまいたくなるのを、こらえてじっと皆さんを見つめていたら、知らないうちに涙が……。
21:44、ふと見ると、哀愁さんが何かをじっと見つめている……。
哀愁「感化された……」

Can☆Do……。
21:45、
哀愁「できる。やればできる。やれば……」
そう呪文のように唱えながら、たった一口を食べるのに何分かかっても、決して無理だと諦めることなく弁当を食べる哀愁さん……。
そんな哀愁さんを見て、ほかの皆さんも止まっていた箸を再び動かし始めた!
21:52、「あともう少しだ!」
応援の声と同時に、もう食べれないはずの渡会さん、佐藤さん意地のデッドヒート!!!

あともう少し!!!

あともう少し!!!!!
そして……!!
21:54、渡会さん完食!!!
渡会「あぁぁぁあーおわったぁぁぁぁああああ!!! 苦しかったぁぁ!」

おわったぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!
21:55、佐藤さん完食!!!
佐藤「おつかれさまでしたぁぁあああ! やったぁぁああ!!!」

食ってやったぞーーーー!!!!
21:56、そんな2人のデッドヒートを見て、東城さんも奇跡のラストスパート!!!

うおぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!
22:00、東城さん完食!!!
東城「終わったぁぁぁ!! 腹痛ぇぇえーーーーーー!!!!」

ぉおっしゃぁぁあああああーーー!!!!
22:04、しかし、まだ終わってはいない……。皆が続々と完食を果たす中、哀愁さんだけはいまだに最後の強敵と戦っていた……。
哀愁「大隈さんを見ながら……食べます」
4日目を思い出したのか、大隈銅像が見える位置まで移動し、遠くの大隈重信像に向かって正座する哀愁さん……。

……大隈先生……。
『……でも本当に銅像見るとやる気出るな……。叱咤激励される感じ』
4日目、こう彼が呟いていたのを思い出す。あの日、彼は想像しえただろうか。今こうして自分が、限界を突破しようとしていることを……。
そんな彼の姿に、応援の声は次第に大きくなっていき、ついには応援歌の大合唱が沸き起こった……。
彼は食べ続けた。
応援の声の中、彼は食べ続けた……。

負けないで。あと、もう少し!!
弁当が減るにつれ、皆の脳裏にさっきまでの死闘が甦った。
そして……!!!
そしてついに、哀愁さんが、最後の唐揚を……!!!!!
22:54、
全員「完食おめでとうーーーーー!!!!!」
哀愁「ありがとうございます!!!」

お、終わったぁあぁあああああ!!!!!
そして、それと同時に、
わせ弁メニュー全制覇達成 & 1週間わせ弁生活、終了!!!
あんなに望んでいた制覇の瞬間。だけど、私は当初の目的であった制覇そのものではなく、「4人が諦めることなく、食べきった」ことに感動していたんです。
思えば、私のふとした思い付きから始まったこの調査。気づけばそれはこんなにも大きな戦いとなり、そして、長かった死闘の先には何ものにも変えがたい感動がありました。
1週間3食わせ弁を食べ続け、見事制覇を成し遂げた男たち。
彼らの名は、永遠に私の胸に刻まれることでしょう。
そして、この早稲田史上に残る死闘は、後々も人びとの心に変わらず、同じことを訴えかけてくるに違いありません。
やればできる。
自分の力は、自分で思うよりもっとずっと大きいものなのだ、と……。
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後日、今まで食べたわせ弁の容器を積み重ねてみました。その数、驚異の85個!

今回食べたわせ弁全81+4食分の空容器。見よこの量を!

積み上げると人をも越す高さ。でもこれでもまだ全体の半分程度。
「もう一生食いたくない」
笑いながらそう言った皆さんの顔は、どこか達成感に満ち溢れていました。
わせ弁にかけたこの夏を、私は決して忘れないわ。
ありがとうわせ弁!
そしてありがとう、4人の戦士たち……。

彼らが残した伝説を、私は決して忘れない……。
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さらに後日―――。
東城さんから、こんな写真が届きました。

富士山頂でわせ弁。
なーんだ。なんだかんだ言っても、やっぱり皆わせ弁が大好きなんですね☆
そうじゃなかったら、1週間3食わせ弁なんて食べれませんものね。
完!
【次回予告】
生協一言カード返信のしくみを暴く!?
次回更新は9/9(土)です、お楽しみに!
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