vol.33 移ろう時代を見つめて・後編

2017年10月24日

1018鹿野さん記事後編

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90年代から2010年代にかけて、文化やメディアの在り方は大きく変化した。音楽好きはCDをはじめとしたモノよりも、ライヴやフェスなどの体験にお金を払う。そして雑誌や新聞のような紙媒体ではなく、TwitterやLINE NEWSなどのウェブ媒体で情報を得る。そのような時代にこれからの文化やメディアはどうあるべきなのか。
 「目に視える音」の司会を務められる音楽ジャーナリスト鹿野淳さんのインタビュー後編は、文化やメディアの未来についてお話を伺った。



鹿野淳
音楽ジャーナリスト。音楽誌「ROCKIN`ON JAPAN」の編集長を務め、独立後は株式会社FACTを設立。「MUSICA」を創刊し、さいたまスーパーアリーナで行われる音楽フェス「VIVA LA ROCK」を立ち上げるなど、様々な視点から音楽シーンを見据えている。



――鹿野さんは雑誌やフェスなどでも、ロックの位置づけを再定義していき、新たな音楽シーンを作り出すため活動をなされています。なぜそのような活動をされているのでしょうか。



ロックのスピリッツを持ったアーティストとそういう音楽のファンのバトンになることが自分の仕事なんだと20年ほどやってきてわかったからじゃないですかね。今の時代、ロックを位置づけたうえで、自信をもって「これがロックです!」と断言できる人たちがあまりにも少なくなってるんですよ。もちろんいつの時代にも、ロックというものはずっと存在し続けている。けど、時代の中でずっと価値観が変わり続けているものでもあるのです。それを誰も位置づけようとしないのは、音楽の作り手や聞き手にとって大きな問題なんじゃないかなと思うんです。
 例えばSuchmosをロックバンドではないと思って聴く人がいたとします。下手したら、大多数の人は彼らをオシャレ音楽ユニットだと思ってますよね。でも、彼らはロックをやりたくてメンバーが出会って、バンドをやってるわけです。つまりSuchmosが作る音楽の根底にはロックがあるんです。そのような彼らのスピリッツを、音楽メディアは伝えていくべきだと思うんですよね、その音楽とその音楽を聴くべき人たちのために。だから僕たちはSuchmosを「MUSICA」で取り上げて、「VIVA LA ROCK」にも出てもらっている。彼らの根底にあるものを伝えるために最大限力になって、しっかり彼らのスピリッツを多くの人に伝えたいんです。だからロックというものを必要とする人がいる限り、僕はこういうことをやっていこうと思ってます。



――ロックに限らず、音楽自体が時代とともにして変化していると思います。そしてそれを聴く方法も変わっていると感じていくのでしょうか。その影響で音楽が変化することはあるのでしょうか。



確かに昔と比べて音楽自体は音楽の聴き方は変わってると思います。Apple MusicやSpotifyのような定額音楽聴き放題サービスが今話題ですが、圧倒的に音楽シーンを変えたのはYouTubeだと思います。いま、かなりの人がYouTubeだけで音楽を聴いていますよね。今や音楽シーンのトップメディアだと思います。そうなることは少なくとも10年前は想像しはじめたかもしれないですけど、15年前は想像もできなかったんです。そういう時代になると、YouTubeで聴かれることを前提に曲作りが始まってるアーティストが多くなるわけですよ。例えばブレイクのきっかけを狙ってるアーティストが、サビの部分でみんなに踊って欲しいからミュージックビデオでも踊るシーンを入れるみたいなことが増えている。実際に曲作りがそこから始まって、生まれた音楽っていくつもあるんです。
 そうなるともはや僕たちも音源をレビューしていてもしょうがないし、YouTubeをレビューしなければならない。けど、そのような時代に対して、まだ音楽メディアは音源や歌詞からアーティストをレビューしたり愚直な取材をしているんです。ここにズレが生まれているという危機感があります。YouTube対応で音楽を作ることがいいとはまったく思わないしむしろ逆なんですが、時代のリアルを掴んで音楽を語ることは大事ですから。つまり、音楽の聴かれかたが変わると音楽自体も変わるんです。だから音楽メディアもその変化に対応をしなければなくて、そのことをすごくせかされているわけなんですよね。



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