vol.35 時間のなかを生きる言葉

2018年5月9日

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――SNSで新しい言葉が次々と生まれる一方で、廃れるスピードも速くなっていると思います。本を編集するという点では、言葉の「寿命」は短くなっていく一方なのでしょうか?



SNSという媒体で新しい言葉が「生まれる」のではなく、言葉が「流れる」のです。インターネットにより、言葉が拡散する速度は以前に比べ、格段に速くなっています。ですが、生まれる速度と廃れる速度はそれほど変わっていないと思いますね。10年前と20年前に広辞苑の編集作業に携わりましたが、「作業量が特別増えた」とか、「俗語ばかり多い」とはほとんど感じないですね。今よく言われている「インスタ映え」という言葉はインスタグラムというSNSで生まれた言葉です。インスタグラムがなくなったらその言葉がなくなるかもしれませんが、ものがなくなっても、不思議なことに言葉って残るんですよ。「ダイヤル」はもうありませんよね。けれども、「伝言ダイヤル」のように、電話を意味する「ダイヤル」は使われ続けている。網じゃなくてスチールだけども、電車の「網棚」といわれています。「インスタ映え」は今は流行語ですが、言葉としてずっと残るかもしれません。かつては「セクシャルハラスメント」も流行語大賞をとるような言葉でしたが、今では日常生活でよく使われる言葉です。かつては流行語とされていても、日本語として定着して広辞苑に載せるようになる言葉は少なくありません。



――広辞苑に載らず、あるいは削除されていく言葉は時代とともに消え去っていいのでしょうか?それとも保存されるのに値しない言葉なのでしょうか?



何のために保存するか次第ですね。ある時代に生きた人たちの生活を研究したいのであれば、保存しないといけない言葉であっても、現代社会を生きるためだけならまったく不要ということもあるでしょう。広辞苑としては、いつの時代の小説、あるいは歌の歌詞でも理解できるようにしておきたいという程度で保存する考えです。だから、「源氏物語」を読むときに役に立つといいし、森鴎外の小説を読むときにも役に立つといいし、バブル期に作られた曲の歌詞を見るときにも役に立つようにしたいと思っています。広辞苑だけですべてが済むわけではありませんが、まず引いてみると何かは分かる入口になる辞典だと思います。なので、実際に辞書を引いてみて、ぜひ言葉の歴史を感じ取ってみてください。



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