特設コラム

グルメ漫画とオノマトペ

「グルメ漫画」というジャンルが存在する。本来現実の感覚に依存しているはずの食事という行為を、絵とセリフだけで読者に伝える、なんとも難しい試みだ。

白黒で描かれ、匂いなんて当然わからず、実際に味わうことなど叶わない料理たち…。しかし読者はそれを見てお腹を空かし、漫画を通して食を楽しむことができる。

それはなぜなのだろうか?もちろん、料理をいかにリアルに描くことができるか、といったことも大切な要素だ。しかし当コラムでは、食事の際の「オノマトペ」に注目してみたいと思う。

 

イベント内でも扱われる「おとりよせ王子飯田好実」の第一話を例にとってみよう。この話で好実は卵かけご飯を作る。とてもシンプルな料理ではあるが、この1話の中だけでも

・ホカホカ

・つるん

・ぷるん

・ぷるぷる

・ほわぁ

・とろり

・はふ

・ハフッハフッ

・カッカッ

など、多くのオノマトペが使われていた。その数の多さにも驚きだが、重要なのは、現実には存在しない音まで描かれている、という事実だ。

例えば、白飯の上に浮かぶ、ホカホカという文字。現実にこんな音は存在しない。だが、この音を書くことによって我々は炊きたてで熱々の美味しい白飯を想像することができる。その他のものも同じだ。ホカホカの白飯の上に新鮮な卵をつるんと落とし、ぷるぷるの卵と白飯が湯気で包まれほわぁ…となる。鮮明な卵かけご飯のイメージが皆さんの頭の中に浮かんできたことだろう。読むだけでよだれが出てきそうだ。美味しそうなものを見た時に頭の中だけでイメージされる音たち。グルメ漫画はそれらを具現化し、現実とはまた異なる食の楽しみを与えてくれる。

 

食事とは本来、五感で味わうべきものだ。目で料理そのものの見た目を、鼻で匂いを、耳で咀嚼音を、舌で味とその食感を楽しむ。では、紙の上で描かれる漫画ではそれらを伝えることはできないのだろうか?

そんなことは断じてない。オノマトペを使い、擬音語、擬態語を使い分け読者の想像力を掻き立てることによって、匂いを、音を、味を、食感を、読者に伝えることができる。そうすることによって読者は時に現実以上の「食事」を体験することができるかもしれない。

今まで意識してこなかった方達は、このコラムを機にグルメ漫画に散りばめられたオノマトペに意識を向けてみてほしい。きっとこれまで以上にグルメ漫画を楽しめるようになるはずだ。