「風に舞い上がるビニールシート」ですかね。大学を舞台にした話もまざっているので。これは短編集なんです。舞台も主人公も全然違うんですけど、全てに一貫したコンセプトがあるんです。
それは、ちょっと世間とはずれているけども、何か一つ自分だけの信念なり守るべきものなりを持っていて、それにのめりこんで地味に生きている人たちを書くということ。自分のこだわりを持っているからこそいい面だけではなく悪い面も出てくる。
自分自身が損をしたり、世間とうまく交われなかったり、そんなマイナス面もありつつも、それでも尚且つコツコツ自分の道を歩んでる人たちを書きたかったんです。その上コンセプトを踏まえた上で、じゃあどんな人たちが自分の道を歩んでるだろう、って考えて、この六つの舞台に絞って書きました。
私が二十歳前後の頃はもう作家をめざして児童文学の専門学校に通っていました。それまであまり本を読んでいなくて、ものすごい勢いで読み始めたんですよ。丁度その頃は村上春樹さん・村上龍さんというダブル村上時代の幕開けと言われていて、私も両方新刊が出る度に読んでいました。
中でも村上龍さんの「コインロッカーベイビーズ」は十九歳のとき初めて読んで、文学ってこんなに力強いんだ、小説ってこんなに迫力や訳が分からない力を持っているんだ、って小説の持つ力に驚きましたね。何回読み返したかわからないくらい読み返してるんですけど、今読んでもやっぱりなんかすごいなって思います。自分の中に一番強く刻み込まれている小説ですね。
二十代というのは一番するするといろんなものが自分の中にインプットされていく時期なので、読めば読むほどたくさんのものが面白いように自分の中に入っていくと思います。私も書くことよりも読むことに一生懸命になっていました。