――まず、安藤さんの今のお仕事について、簡単に教えてください。
NPO法人ファザーリング・ジャパン(以下FJ)で代表をやっていて、事業の目的は「父親支援」をすることです。 子育て支援というとお母さん向けはいろいろあるけれど、お父さん向けの育児支援をするNPOはうちが初めてだと思います。
――なぜそういった事業を始めたのですか?
子どもが生まれたのがきっかけでした。 11年前自分が父親になったとき、最初は経験もないしよくわからず不安だった。 それが、日々父親をやっているうちにできるようになっていきました。 家族や子どもを持って、ひとりの人間としても成長できた。 子どもは、今まで知らない世界を教えてくれる存在なんです。
今、巷では、育児をしたいお父さんが増えてきています。 僕と同年代、つまり君たちのお父さんくらいの世代では、男は外で仕事、女は家事といった性別役割分業の意識が強かったけど、 今の30代前半から下の世代の男性たちは、育児を楽しみたいと普通に思っている。 しかし、子どもを持つ頃ってちょうど仕事が忙しくなっていく時期とリンクしてくる。 長時間労働が続き、子育てに満足に関われないこと自体がストレスになっているようです。
FJは、そこを応援してあげたい。 働き方の見直しと、子育ての面白さの伝播かな。 疲弊やストレスで笑顔をなくしてしまったお父さんたちに、普通の暮らしや自分自身を取り戻していってもらいたい。 子育ての楽しさに気付いて笑顔になった父親の存在が、子どもの健全な成長につながると思うし、 お父さん自身の健康やキャリアにもプラスになると僕は思っています。 父親が変われば、世界が変わるんですよ。
――――父親が変われば世界が変わる、というのはどういうことですか?
お父さんは社会を変えていく力を持っています。 それは会社での地位や権力といったものも含めた「力」ということです。 一人の父親として、また、市民としての考えや哲学があれば、 企業の商品やサービスも、環境にいいもの・次世代にいいものになってくるはずです。
たとえば、ベビーカーを押して歩く大変さが広く知られていないがゆえに、段差のある道やエレベーターのない駅など、配慮のなされない環境が存在する。 それは女性が長年訴えてきたことだけれど、決定権があったのは男性だったため、なかなか変わることはなかった。 このようなことがないよう、決定権を持つ人から意識を変えていき、ユニバーサルデザインを普及させていくことが求められていると思うんです。
男性の育児に対する意識を変えていくことで、社会のいろいろなことが変わってくると思っています。