「未知」のものを恐れてはいないだろうか。新しいものとの出会いを自らの糧にし、常に自分の可能性を探り続けている人がいる。NPO法人GLOBE PROJECT代表の菅原聡さんは、大学二年生のとき、何かを変えたいという思いで一念発起、世界一周の旅に出た。そこでの経験は菅原さんの人生を大きく変えることとなる。現代の若者に必要な、人並み外れた行動力を持つ彼の活動のルーツに迫る。
菅原聡(すがわらそう)
1983年北海道生まれ。小学校から大学二年までラグビーを続ける。早稲田大学在学中に世界一周を経験、その後GLOBE PROJECT(のちにNPO)を設立する。現在は会社員として働きつつ、GLOBE PROJECT代表を務めている。
〈GLOBE PROJECTとは〉
スポーツで社会問題の解決を目指すNPO団体。菅原さんが世界一周から帰国した2006年に、任意団体として設立された。KICK THE MINE CUPというプロジェクトから活動がスタート。これはフットサル大会の参加費の一部を地雷除去費に充てることで、大会で使用したコートと同じ面積のタイ・カンボジアにある地雷原を除去する仕組みだ。現在はこのほかに、東北震災被災地のサッカー少年を応援するDream Ticket Cupを行っている。
――菅原さんは在学中にGLOBE PROJECTを設立しましたが、そのアイデアは世界一周をしているなかで思いついたのでしょうか。
アフリカにいたとき、紛争や貧困で苦しむ人々を見て、人はこんなにも深く傷つけられるべきじゃないし、こんなことのために生まれてきたわけじゃないと思いました。それから世界の構造はどうやったら変えられるのかなとずっと考えていて。地雷を除去するフットサル大会のアイデアがぼんやりと浮かんだのは、そのときです。
――すでにあるNPOなどに参加したりボランティアに参加したりするのでなく、ご自身で団体を立ち上げようとお考えになったのはなぜですか。
もともと設立がしたいと考えていたのではなくて、地雷原とフットサルコートが同じくらいの大きさで、これをスポーツイベントに応用できるんじゃないかなという思いつきを形にしたいって思ったのが先でした。まずひらめきがあって、これをやりたいと。そのために組織が必要だったという感じです。ほかのNPOでこのイベントができたかどうかはわからないけど、誰かの組織に入れてもらうことは考えていませんでした。
――世界を回る過程でいろんなものをご覧になったと思うのですが、そのなかでタイとカンボジアの国境にある地雷原に着目した理由はなんですか。
たまたまタイとカンボジアの国境に行ったときに、広がっている地雷原の存在や、その除去費用が1㎡1ドルであることを知って、「日本でフットサルをすることで地雷原をなくす」というアイデアがひらめいたんです。本当はアフリカで何かできたらいいなと考えていたんですけれど。タイやカンボジアに強いこだわりがあるわけではなくて、今後は別の場所でもいいと思っています。ただ地雷除去というのは調べたり触れたりするほど、基本的なところで人の生活を支えるものなんだなというのがわかりました。地雷は現地の人にとって本当に身近な脅威ですから。
それ以前はアフガニスタンの学校建設に関わったこともありました。でも、紛争が起きて行けなくなってしまいその後どうなっているかわからないとか、教師の給料を支払い続けることがむずかしいとか、当時の僕らには力が及ばないことも多かったんですね。それに比べて地雷除去は、プラスかマイナスかでいったら、プラスだけで完結する。仮に活動を中断することがあっても、そこまでやってきた成果がマイナスになることはないんです。地雷がなくなった場所は、道路になるかもしれない、学校になるかもしれない、工場、農場、誰かが大切な人に会いに行くための道になるかもしれない。地雷除去が経済活動や市民活動のベースになるというのは、すばらしいことだと思います。
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