vol.20 ポップになっても良いじゃない。

2015年4月26日

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中村佑介
1978年生まれ。兵庫県宝塚市出身のイラストレーター。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットや、『謎解きはディナーのあとで』『夜は短し歩けよ乙女』の書籍カバーなどを数多く手掛ける。また、アニメ『四畳半神話大系』やテレビCM『果汁グミ』のキャラクターデザインやテレビ出演、自身もバンド活動をするなど活動は多岐に渡る。著書の『Blue』と『NOW』は画集では異例の10万部を記録中。


ポップカルチャーってなんかダサい。流行っているものは好きになれない。そんな思いや抵抗感を抱く人がいる。その裏返しとしてサブカルチャーはカッコいいと感じ、のめり込む。でも本当にポップカルチャーはカッコ悪いのか?サブカルチャー好きの心をとらえたイラストレーターでありながら、「イラストの大衆化」を唱え、イラストをポップカルチャーにするため変化を続けるイラストレーターの中村佑介さんに、ポップカルチャーを目指す意義について聞いてみた。



中村さんはインタビューなどで「イラストを大衆化したい」とおしゃっていますよね。そもそもなぜサブカルチャーであるイラストの大衆化が必要なのですか?



サブカルチャーのままじゃ、イラスト業界に広がりがないからかな。サブカルチャーっていうのは、前提としてマニアックなものだから、そこを突き詰めていくとお客さんがどんどん減っていくんだよ。ある一部分に特化されたものって、人に薦めにくいから広がらないし、知識もどんどん深くなって入りづらくなるということが起きるからだね。ただし、マニアックな文化はあってもいいと僕は思う。でもそれは結果としてマニアックになるのであって、そこを「マニアック=かっこいいから」と最初から目指すのでは本末転倒なんだよね。製作側にいると、サブカルチャーの中にいるというのはすごく簡単なんだよ。ほんとすごく簡単。極端に言うと、何もしていなくても人気がなければサブカルチャーな訳だからさ。そこに「知る人ぞ知る」と付けたらそれでOK。でも、サブカルチャーの中にいては、業界自体を盛り上げることはできない。例えばイラスト誌の中で一番古くからあって、売れている『イラストレーション』でさえ、いまだコンビニに置かれていない状況がある。日本で一番有名なイラストレーターの和田誠さん、何人が作品とお名前が一致するだろうか。すなわち「イラスト界」というのは、そこまで有名でもサブカルチャーなんだよ。だからそろそろ誰かやらなくてはいけない。そしてそれは自分かもしれないなと思った。おこがましくも、なんだけれどね。僕は、どう見られるかということにあまりこだわりがないから。テレクラのティッシュに使われてもいいし。そこらへんの境界線が自分にはないんだよね。だからこそ、僕が大衆化に向かう壁を越えられるのであればやりたい。



具体的には大衆化のために何をされていますか?



画集において補足をなくしたこと。「絵」って何かの文脈のなかで語られないと良いと言えない、みたいなところがあるよね。画集においても、例えば画材名なんて書かれていても絵を描かない人にとってはどうでもいいどころか、敷居の高さになる。それが書いてあるおかげで知っている人は優越感に浸れるんだけどね。あとは、製作年とか解説とか。解説というのは横についている、「その絵のテーマが何だ」みたいなもので、絵やイラストをどんどん勉強の方に持って行ってしまう。だから日本人は美術館に行くのって少し抵抗があるんだよね。なぜかというと、問題を解いて答えを出さなければいけない場として考えているから、「美術館は難しそう」ってなる。「単純にこの絵なんか面白いね、きれいだねという見方が、まるでインテリジェンスじゃないこと=良くないことなのではないか」「もっと深い意味があるに違いない」「そしてそれを探らないといけない気がする」「じゃあ面倒くさそうだからもう絵を見ない」となってしまっているのではないか、と考えた。僕が画集でやっているのはそういうアカデミックをひとつひとつ潰していくこと。今回はいちばん最後に袋とじみたいな形で解説は付けたのだけれど、前回も今回も紙面には何も載っていない。何のジャケットかも分からないし何の本の表紙かも分からないのだけれど、何に使われたとかではなく、「答えはないから自由に楽しんでください」というような楽しませ方をしたい、ということだね。




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▲中村佑介画集『NOW』(飛鳥新社)/表紙


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