vol.20 ポップになっても良いじゃない。 ツイート

2015年4月26日

1 2 3

なるほど。画集の見せ方にそんな思いがあったのですね。では、イラスト自体についてですが、最近手掛けられた、さだまさしさんや柏木由紀さんとのコラボレーションイラストは見る層が異なりますよね。さださんだと主に中高年、柏木さんだと主に男性アイドルファンというように、いつもの中村さんの絵を見ている層(10~30代の女性中心)とは異なります。そういったイラストを描くときに心構えの違いはありますか。



気にかけているのは、あの絵柄が好きではない人をどうやってびっくりさせるか、楽しませるかということ。あの絵柄とかあの色合いとかあの女の子像が好きではない、嫌いではないけど引っかからない、という人はたくさんいると思うんだよね。そういう人たちに向けて何をするかということ。例えば男女関係でいうと、最初は彼が彼女の方を一方的に好きで、彼女の方は「このヒトの顔、ぜんぜんタイプじゃなかったのに…」と思ってはいるけど付き合って結婚するカップルっているよね。それは熱や気持ちが伝わったということでしょう。要はイラストにおいても同じで、絵柄とかタッチ、作風、色合いなんて人間の顔面の作り(タイプ)みたいなものだから、そんなところいくらでも変えられるというか、それ以上に見せるべき大切なポイントというのが実は絵のもっと奥側にあるというかね。それはストーリーであったりユーモアであったり。そう、「面白さ」って、実は外見ほど好みが分かれないんだよね。あと驚く感覚。これも好みがない。昔、小学校1、2年生の時に一番びっくりした同級生の絵って細かい絵だったと思うんだよ。誰も解けないほど超細かい迷路をひたすら描いてる男の子いなかった?あれ見た時にびっくりするよね。好き嫌いは置いておいて。え、あなたが描いたの!みたいな。その感覚って大切で、「これ手で描いたの!?」とか、「細かいなあ」とか「面白いなあ」という感覚が伝わる事を念頭に、柏木由紀ちゃんのグラビアも、さだまさしさんのCDジャケットも取り組んだ。




appare
▲さだまさし『天晴~オールタイム・ベスト~』(ユーキャン)/CDジャケット



kashiwagi01
▲ビッグコミックスピリッツ 2012年31号(小学館)『柏木由紀×中村佑介 グラビアート01』


あとは丁寧にやるということだね。丁寧さが伝わるように描くというか。時間かけているな、それだったら結構価値ありそうだなぁ、みたいな。それさえきちんとクリアしておけば、僕の絵が好みではない人でも認めてくれるというか。だからあの2つのお仕事はやはり手ごたえがあったよね。それまで自分の絵が届かなかった方たちがサイン会に来てくれるようになった。あとは『謎解きはディナーの後で』で子どもが来てくれるようになった。今回、新しい画集『NOW』を発売したんだけど、その中に載っているものでは、この3つは今までと違う層に響いたという点で、僕のなかでは大きかったね。




nazo
▲東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(小学館)/単行本&文庫表紙


大衆化のためにこれから新しくやろうと思っていることは何ですか?



柏木由紀ちゃんもさだまさしさんもそうなんだけど、もっと想像のつかないような人・作品・場所とコラボレーションしてみたい。画集『NOW』のなかにキキララ(リトルツインスターズ)の絵があって、あれはあくまで対談の時に描かせて頂いた色紙のイラストなんだけど、そういうのをきちんとコラボレーションさせて商品にするとか。やはり日本で一番強いイラストレーションのひとつはサンリオだと思う。書いている人の名前は皆知らないけれどサンリオという会社、そしてそのキャラは皆が知っている。そして、ミッキーマウスってアニメがはじめだけど、キティーちゃんとかマイメロは後々アニメになっただけで、元々キャラクターだけの商品なのにこんなにも普及しているのは、よく考えたら本当に凄いことなんだよね。サンリオの強度はそこで、アニメ化されていない、イラストのキャラクターのみでそれだけ人気になるのって、日本特有だと思う。そこに見習うべきものがたくさんあると、今考えていますね。



【次ページへ】サブカルは若者が通る道?サブカルしか受け入れられない人に中村さんが思うこととは。
1 2 3

Copyright 2013-2015 All rights reserved, www.waseda-links.com