「解体と構築」講義レポート 後編 ツイート

2016年2月18日

report2-re

1 2

2015年早稲田祭初日、我々早稲田リンクスが作曲家・杉山勝彦氏をお招きして開催した講義「解体と構築~音楽の生まれる瞬間~」。杉山氏は嵐や中島美嘉、AKB48、乃木坂46、私立恵比寿中学をはじめとする多くのアーティストに楽曲を提供し、今日の音楽シーンを代表する作曲家だ。また、ポップスユニット「USAGI」のギタリストとして自身もアーティスト活動を行っている。以下、イベント当日の模様をレポートする。(前編はこちら)


【後編】

そしてここからは当イベントのメインテーマ、解体と構築に移る。



・一番綺麗な私を/中島美嘉


お題は昭和歌謡。「人生で一番の大恋愛を思い返す」というテーマで作詞作曲。女性は恋をしている時が一番輝いていると感じていて、人生で一番の大恋愛をしていたときの自分を「一番綺麗な私」と表現した。歌詞は、日本語の厄介さを逆手にとって利用している。英語であれば一単語を一音で言い切れるが日本語ではそうはいかないため、日本語のイントネーションにメロディーを合わせて作っている。


この曲のアレンジに行き詰ってしまったとき、違うエンタメを見ようという考えでゴッホの展示会に行った。ゴッホは自身の作品が世間で認められないなかで、苦しい思いをしながら創作を続けた人。ゴッホの作品として広く知られている色彩とタッチを生み出すきっかけとなったパリでの経験の展示と彼の作品の変化に感動し涙した。そのときにインスピレーションが湧いたという。印象派の画家の絵を浮世絵の人物が歩くというイメージを音にする発想から、点描を表現しようと考え、音を分散させたピアノを基調とした。



・仮契約のシンデレラ/私立恵比寿中学


与えられた複数のテーマの中のひとつに「仮契約」という言葉があり、面白いと感じる。そしてエビ中のコンセプトである「キングオブ学芸会」から「シンデレラ」を連想した。そもそもエビ中はその時点ではレコード会社と「仮契約」の状態であり、アイドルがブレイクすることは現代におけるシンデレラストーリーなのだ。


無秩序な曲に聴こえるが、一つひとつに意味をもたせて作っている。たとえばBメロは「エリーゼのために」のメロディーをサンプリングしている。ベートーヴェンの身分違いによる実らない恋と、シンデレラと王子の身分の違いによる絶望感を重ねている。歌詞のなかでは、「わたしたちはゆとり世代じゃない!」というアピールとして円周率をたくさん並べたり古文の活用形を取り入れたりするなど、細かい工夫も。馬が走る音、鐘の音を入れてほしいなどの依頼にも全てこだわりをもって対応した作品である。


趣向を凝らした二曲と異なり、乃木坂46の「君の名は希望」は自然にできた曲であるという。
「先ほどの二曲は世に出てほしいと思って作った曲でした。しかしこの曲は、お風呂あがりにピアノを弾いていたときイントロが自然に出てきたのです。それをそのまま使いました。」



【次ページへ】人間は、過去も現在も未来も、いくらでも自分の手で変えることができる
1 2

Copyright 2013-2016 All rights reserved, www.waseda-links.com