――大学3年生の時に中退されたんですね。その後アメリカに行く時はどんな気持ちだったのですか。
「自分がこうするべきだ。自分は間違っていない」という確信のもとに行ったから、その後色々とうまくことが進んだんだと思います。
もし半端な気持ちで行っていたら、きっと駄目だったんだろうなと思う。自分はアメリカで何らかの成功という形になるまでは帰らないぞという強い気持ちでアメリカに行って。行けばきっと何とかなるだろうと。
実際に何とかなった。けど、そのときはどういう風になるかなんてわからなかった。
けどね、自分ではわからなくても自分が正しいと思えることを行えば何とかなるんだ。
当時はそういう風に思っていたし、今振り返ってみても同じですね。
――アメリカでの経験を詳しく教えていただけますか。
アメリカ着いて最初はサンフランシスコにいてね。しばらくいると、アメリカにいるにはどうやらビザが必要らしいとわかってきた。そんなことも知らずに行ったんだけどね(笑)
3ヶ月もしてビザがないと日本に戻されちゃうらしいよと聞いて。「日本の土はもう二度と踏まない!」というぐらいの勢いで出てきてしまったからどうしたもんかと頭を悩ませていたな。
そこで色々調べていたら、みんながまず取るのは学生ビザらしいんだよね。けど、学校に入るとまたお金がかかる。でも貯金もそこそこで行ったから、あんまり多くのお金は使いたくない。
そうしたら、地元で知り合いになったの親父さんが「それならいいところ教えてやる」と言ってくれて。
それでロサンゼルスに飛んじゃった。そのときはとりあえずアメリカにいることで必死だよね。
けれど、学校に入って2ヶ月ぐらいしたところで、「俺はなにやっているんだ。語学の勉強するためにアメリカに来たわけじゃないぞ」と気づいて。
何かしなきゃと思って、とりあえず次のビザを取るために動き出すんだ。それから調べて考えたのが、自分で会社を作って、自分でビザを出しちゃえばいいんだという案(笑)思いついたらその足で図書館に行って、『会社の作り方』っていう本を読んでいた。そこのフロッピーディスクに入っていた会社申請書サンプルをほとんどそのまま使って「出したー!」ってなった。でもね、会社を作って自分がオーナーで自分にビザを出そうとしたら、どうも、オーナーにはビザが出せないってなったらしいんだ(笑)会社作った意味ないじゃんって思ったんだけど、法律だからしょうがない。
幸い、そこでもいろんな人に支えてもらうわけですよ。その中で仕事をもらってやって、いい評価を得て、また仕事が来て。そういう風に仕事をやりながら、自分の会社でもオリジナルのビジネスをやったんだ。
それは、「ロサンゼルスの駐車場の地図」。ロサンゼルスって車社会なのに、路上にある駐車場の位置が分かりにくくて、警察の取り締まりも厳しい。しかも駐車場を利用できる時間が区切られているからややこしい。要はわかりにくいんだよね。
だから全部調べて、地図上にここなら1時間停められますとかを色分けして、駐車場の値段とかも全部調べて、地図を作って出した。それが大好評で、現地の新聞や雑誌にも取り上げられた。「これいけるじゃん!どんどん増やそう!」ってなったんだけど、「お前、社長がビザ無いってやばいだろう」と。人を増やすどころの話じゃない(笑)
そのとき、ちょうどその地図をプリントするときにいくつか当たった印刷関連の会社の人から、「今、デザイン事務所でいい人探しているんだけど、ちょっと会ってみてくれないか」って言われたんだ。俺もそこならきっとビザを出してくれるだろうと思って、会いに行ったんです。 そこは印刷主体のデザイン部門だったんだけど、ちょうどマルチメディア部門を始めたところで、人を募集していたんだね。そのデザイン会社ってロサンゼルスの中では大手の方で、クライアントも日本、アメリカ問わず有名企業が揃っていた。そこで働くことができるようになって、結局、部門のチーフにまでなりました。
しばらくして大学生の頃『A/D』を一緒に作っていたメンバーのひとりがGoogleのコンサルタントをしていて、Googleの人から「いい人いないですか」という話を受けたらしく、僕のところに連絡が来たんです。とりあえず履歴書とか送るからって言っていたらうまく通って。それからGoogleに入って今に至るんだよね。
――アメリカでも多くの決断をされてきていますが、悩む瞬間はなかったのですか。
悩むことはなかったな。この先どうなるんだろうなとかで悩んでたら、身動き取れなくなってしまう瞬間はいっぱいあるよ。僕の場合はそういうことをあんまり深く考えていなくて、行けばなんとかなるっていうのかな。
本当にそうなんだよね。実際なるようになる。それに、悩むのと考えるのとは違う。
会社を通じてグリーンカード(米国の永住許可証の別称)の申請もしていて、それも最終段階まで到達していた。あともう少し待てば、グリーンカードも申請が通ってアメリカに永住するなんてこともできたんだ。
ただ自分だけのことではないし、妻のことや家族のこと、自分のこと、そこでは色々考えたな。もし自分がアメリカで得たものを生かせるような仕事があったら日本に帰ってもいいかなって思っていてね。そうこうしているときに、さっきのGoogleの話がたまたま来て。そうしたら僕もまあ日本に戻ってもいいかなって思うようになったんだ。