――今までのお話だとすごく壮絶な経験をなさってきていますね(笑)
確かに壮絶かもしれない(笑)けど僕から言わせるとちょこちょこ悩むことって、気持ちはわかるけどあんまり悩んでいてもしょうがないって思うな。
自分がやりたいことをやるのが一番よくて、決断っていうのは僕にとっては難しいことじゃない。 決断をする前の段階で色々と考えることは確かに時間がかかる。けど、決めるところは本当にたいしたことじゃないんだよ。スパっと決めるものなんだ。そこでぐずぐずしていることはもったいない。
結局はどっちか選んでしまえばどっちかでどうにかなってしまうんですよ。頭の中で考えるよりも、例えば将棋で羽生さんが何十手先、何百手先、何万手先を読むとか言うじゃない。これらをひとつひとつ頭の中ですべて考えているなんかは考えられないけど、彼らはそれが直感でわかるんだよね。こっちへいったらやばそうだとか。それはそれまでの経験からの裏づけでパァーっと浮かんできてこれだって言う風にしてやっていると思うんだ。
色々な可能性の中、自分が道を選ぶときって理屈じゃなくて、インスピレーションっていうのかな。それが大きいと思うんだよね。それが気持ちの中で出てくると思うんだ。
そっちへ行ったら正しくないんじゃないかとか、あっちへ行ったら自分に嘘をつくことになるんじゃないかとかね。
一番いい選択肢って言うのは、自分が一番いいんだって思えること。それは、ほとんどの場合正しいと思う。
たぶんそこで、失敗しないようにしようとか、そっちに行ったら失敗しそうだとか、周りの人がこう言っている、親が止めるとかそういうことって言うのは、まったく決断には影響させてはいけないと思う。決断をする前の段階でこの人がこう言っているとかを考えるのはいいと思うんだよ。
けど、決断するときにそれが足を引っ張るようではいけない。自分の中の「よし!やっちゃおう!」みたいな腰の軽さというか。そういうのが他の人よりも、もっと先に行きたいとか、違うものを見たいと考えるならば必要なんじゃないかな。
――今、僕はちょうど大学3年生で、川島さんが大学を中退された時と同じ時期なのですが、大学を辞める時や、色々なことに飛びついていくときの「決断」はどのようにされてきたのですか。
僕はね、あんまり悩まないほうなんですよ。たぶんそこがいいところでもあり、悪いところでもあると思うんですよね。自分がこうありたいということがはっきりしているんですよ。
今の人たちは迷って正しい選択をしなくちゃいけないと思ってしまう。その決断が間違ってしまっていたらどうしようとか先に考えちゃうと思うんですよね。
僕の場合の具体例を出すと、学生のころ『A/D』を作った時の話だけどね、やっぱりお金がないわけ(笑)お金がないからどうしようかってときに、これはあんまりお勧めできないんだけど学生ローンに借りに行ったんだよね。それも普通だったら、借りに行くまでにもうちょっと深く考えろよってわけなんだけど、学生の若さと、自分たちの中の「これは正しいことをしているんだ」っていう感覚があったんだね。
そのときお金が必要だった理由がCDを刷ることと、それを新入生全員に無料で配ろうということ。新入生のために作ったわけだから、新入生にはただで配るのは当然だろうと。もちろん在校生はみんな買えと(笑)
新入生は1万人だよね。何人かの有志で行って、ひとりあたり50万ぐらい借りてきたよ。それで『A/D』を作った。
そのときの決断って言うのも、なんとかなるだろうって気持ちだよ。日本に帰ってきて当時のメンバーとも会ったりしたけど、みんなちゃんと返済して、その決断を誰も後悔してない。後悔どころか、やってよかった、という気持ちだった。なんとかなるでやっても失敗するときもある。けど、頭で考えるんじゃないんだよね。ハートで考えるっていうか、「正しいことをしているんだ」って感覚。「自分がいいことだ」って信じることができるかどうかが決断って言うことではすごく大事になってくるんじゃないかな。
――自分の中で「正しいことをしている」という感覚を信じることができるかが大事なんですね。
そうだね。それがちゃんとしっかりしていれば、どんなことを決めても結果的にはよかったねってことになると思うんですよ。けど、それが自分の中で疑問を持ちながらやったりしているとどんなことがあっても結果的に良くても、あのときこういう道があったのではないかって思ってしまうんじゃないかな。
だけど、自分でこれがいいと思ってやるから結果的に成功へと進んで行くと思うんだ。
決断って言うのはその瞬間なんだ。けど、決断には決断をする前の段階っていうのがあるんですよ。その前の段階っていうのが、結局自分がどういう風にそれまで考えてきたかとか、自分がいつもどういう風に考えているかというのがある。それがあって初めてインスピレーションというかハートの部分が出てくるんですよね。その上に決断っていうものがあるんだ。
だからいい決断をできる自分っていうものを作っていくことが大事だと思うな。他の人と同じように決断をして、他の人と同じようにやっていったらみんなと同じようにしかならないわけですよ。そうならないためには自分という軸があって決断をすること。それを後悔にしないためには、自分のハートで感じて選んでいくことだね。
あともうひとつ大事なことは、自分が決断するときに考えている自分の頭の中のことなんかは、実はすごく狭い範囲のことなんだ。ちょっと先の未来のことなんかはコロっといくらでも変わるものだしね。そんなこと誰かが予測したりできるわけじゃない。行けば実際なんとかなっていくんだよ。